よくあるご質問(Q&A)
- Qスマホの使いすぎで「まぶたが重い」「眠そうに見える」ことは本当にある?
- A
あります。長時間のスマホ・PC作業は、上まぶたを持ち上げる“眼瞼挙筋”の疲労を招き、まぶたが開きにくくなることが確認されています[1]。
- Qこれは病気?眼瞼下垂と同じ?
- A
医学的な「眼瞼下垂」とは区別されますが、疲労で一時的に開きが悪くなる“隠れ眼瞼下垂”のような状態があります。放置すると本格的な下垂に移行することもあります[2]。
- Q写真で自分が“眠そう”に見えるのも関係する?
- A
あります。挙筋疲労と代償動作(眉を上げる癖)により、目の開きと表情のバランスが崩れ、実際よりも眠そう・疲れて見えてしまうことがあります[3]。
1. スマホ時代に増えている“まぶたの重さ”
近年、スマホを長時間使用した後に
「最近、写真の自分が眠そう」
「目が小さくなった気がする」
と訴える人が増えています。
これは単なる気のせいではなく、長時間の近業作業で眼瞼挙筋が疲労し、開瞼力が低下しているためと考えられます[1]。
スマホやタブレットを使うと視線は自然と下方向に向き、挙筋は“まぶたを支え続ける負荷”が増します。
挙筋はもともと常に働いている筋肉であり、そこに現代の長時間VDT作業が加わると負担はさらに大きくなります[3]。
この状態が、いわゆる“隠れ眼瞼下垂”と呼べるものです。
2. 視線が下がると挙筋が疲れる──構造的な理由
スマホを見る姿勢では、顔を下に向け、視線も下方向へ向きます。
視線が下がると、眼瞼挙筋はまぶたの重量を支える負荷が大きくなり、長時間続くと疲労が蓄積していきます[3]。
さらに、集中して画面を見ると瞬きの回数が減り、
- ・乾燥
- ・角膜刺激
- ・眼精疲労
が重なり、開瞼力がさらに低下します[1]。
結果として、まぶたが重く感じられ、
「目が開きにくい」「集中すると目が細くなる」
という症状につながります。
3. “代償動作”として眉に力が入る
まぶたの開きが不十分になると、体は自然と以下の代償を行います。
眉を上げてまぶたを持ち上げようとする。
この代償動作には以下の影響があります。
- ・眉間のシワが深くなる
- ・おでこの横ジワが刻まれる
- ・表情がこわばる
- ・疲れた・眠そうな顔に見える
この変化は本人が気づきにくい一方、写真では如実に表れやすいため、
「美容的な不満」として訴えが強くなる傾向があります。
“隠れ◯◯”という言葉がフックとして強いのは、この自覚しにくい構造にあります[3]。
4. 顔の印象が変わるのは「筋肉」「皮膚」「姿勢」の総合結果
挙筋の疲労は、単にまぶたの開きだけでなく、顔全体の印象に影響します。
まぶたの開きが悪くなると
→ 目が小さく見える
→ 眉で補おうとする
→ 顔の上半分が緊張した表情になる
→ 全体として疲れて見える
という連鎖が起こります[2]。
姿勢の悪さ(猫背・うつむき姿勢)が加わると、表情筋のバランスも崩れ、さらに“眠そうな表情”が強調されるため、スマホ時代特有の現象といえます[3]。
5. 放置すると“本格的な眼瞼下垂”に移行する可能性
長期間にわたり挙筋疲労が続いた場合、挙筋腱膜が徐々に伸びたり緩んだりし、医学的に診断される眼瞼下垂に進行することがあります[2]。
特に、
- ・スマホ・PC時間が長い
- ・姿勢が悪い
- ・眉で補う癖が強い
- ・ドライアイがある
といった環境が重なると、若年者でも軽度の腱膜下垂が出現することが報告されています[1]。
“隠れ”の段階で気づければ改善可能ですが、移行してしまうと治療の選択肢も変わってしまうため、早期対策が非常に重要です。
6. 今日からできる対策
① スマホ・タブレットの距離を保つ(30cm以上)
視線が強く下がるのを防ぐために、デバイスを“持ち上げる”姿勢を意識します。
② 20-20-20ルールで作業をリセット
近業で固まった挙筋や調節筋を休ませる効果があります[3]。
③ 姿勢を整える
猫背を避け、頭部前方位にならないよう注意します。
④ 眉の代償動作を避ける
眉に力を入れる習慣は、疲労の悪循環の入り口です。
⑤ 乾燥対策と瞬きの意識
乾燥は挙筋疲労をさらに悪化させるため、環境調整が有効です[1]。
まとめ
スマホの長時間利用が日常化した今、
挙筋疲労による“隠れ眼瞼下垂”
は非常に増えています。
- ・まぶたが重い
- ・眠そうに見える
- ・写真で目が小さい
- ・眉に力が入る
これらは単なる美容の問題ではなく、まぶたを上げる筋肉の疲労という“機能的なサイン”でもあります。
習慣を整えれば改善できるケースが多く、症状が続く場合は早めの眼科相談が大切です。
参考文献
[1]大鹿哲郎『眼科学 第4版』文光堂, 2022
[2]日本眼形成再建外科学会「眼瞼下垂の評価と治療」
[3]厚生労働省 VDT作業指針

