オルソケラトロジーとは

オルソケラトロジーは、内側に特殊なデザインが施された、高酸素透過性のハードコンタクトレンズ(オルソ-Kレンズ)を寝ている間に装用する近視矯正法です。その特殊なデザインのレンズが、寝ている間に角膜の形状を平らに矯正することで、近視の改善を行います。そのため、翌朝レンズをはずした後も矯正された角膜形状は一定時間保たれるため、日中は裸眼でも良好な視力で過ごすことが出来ます。
※注 視力が安定するまではソフトコンタクトレンズをお使いいただく場合があります。
   また、効果の現れ方には個人差があります。
 
オルソケラトロジーの歴史は古く、その起源は中国に遡ります。就寝中に目の上に砂袋を置いたのが始まりと言われています。その後、1960年代にアメリカでオルソケラトロジーの基礎が完成しました。日本でも近年、多くの眼科で取り入れられるようになってきました。
※注 2024年より、メーカーからオルソ-Kは成人に対しては安定性の面から非推奨となっています。
   また、夜間の運転には禁忌となりました。

近視とオルソケラトロジー

近視の状態というのは、眼球の前後の長さが通常より長く成長した状態です。そのため、焦点が物を見るための神経(網膜)に位置せず、手前に位置することにより物がぼやけて見えてしまう状態を言います。

オルソ-Kレンズは通常のハードコンタクトレンズとは異なり複雑な内面構造をしており、角膜中央部を圧迫するようなデザインになっています。

オルソ-Kレンズを就寝中に装用することにより、角膜が平坦化し、焦点が目の奥にまで届くことによって近視が矯正されます。

オルソ-Kレンズを外した後も、一定期間は角膜の形状が平坦なまま保たれるので、日中は充分な裸眼視力が維持されます。

成長期の近視進行抑制に

近視は遺伝および環境によって、眼球が前後に長く成長してしまうものですが、主に就寝中に成長します。その成長する時間帯にオルソ-Kレンズを装用することで、近視の進行を強く抑制することが分かっています。そのため、従来大人だけに適用されていたオルソケラトロジーですが、近年は成長期のお子さまに適用されることが多くなりました。当院では開院当初からこのオルソケラトロジーに取り組んで参りました。

オルソケラトロジーのメリット

1. 近視進行抑制

上述のように、近視の進行を遅らせることが出来ます(個人差があります)。強度の近視による医学的・社会的不利益を回避できる可能性があります。

2. 日中を裸眼で過ごせる

レーシックのような手術をせずに日中裸眼で過ごす事が出来ます。そのため、スポーツ愛好者を初めとして、職業上メガネやコンタクトレンズの装用が不便と感じる人や、乾燥感が気になる人などに適しています。

3.元に戻せる

オルソケラトロジーは、使用を中止すれば元の状態に戻る『可逆性』が特長です。レーシックのような手術では、術後に何らかの問題が生じれば元に戻すことがほぼ不可能ですが、オルソケラトロジーは中止すれば以前の状況に戻すことが出来ます。

4.紛失しにくい

外出時に装用するわけでは無いので、基本的には紛失しづらい物です。しかし、時に就寝中に何らかの理由によって外れてしまって見つからない、といったご相談があるのも事実です。大抵布団のどこかにあるはずですので、その際はよく探さねばなりません。

オルソケラトロジーのデメリット

1. 安定性

オルソ-Kレンズは就寝中に角膜の中央部に安定することにより、はじめて良好な視力を得ることが出来ます。就寝中に目をこすったり、目を閉じるのが不十分などの不確定要素により、翌日の視力が思ったほど出ないこともあります。「明日、確実に視力1.2が欲しい」と思っても、そうならないこともあり得るという、安定性の保証がありません。

2. 傷や炎症が生じる可能性がある

装用中にオルソ-Kレンズと角膜の間で摩擦が生じることにより、角膜の傷や炎症が生じる場合があります。しかし、これは日中に装用する通常のレンズでも同様で、装用時間が長ければ長いほど、リスクも増大します。オルソ-Kレンズが6~8時間程度の装用に対して通常のレンズは12時間ですので、オルソ-Kレンズの方がリスクは少ないとは言えるでしょう。仮に何かあっても、治療により元に戻すことができ、再び装用することが可能になります。

3. 感染症

通常のハードコンタクトレンズと同様にレンズの洗浄が十分でない場合やレンズが清潔に保たれていない場合、角膜感染症を引き起こす可能性があります。 そのなかでも特に重篤な感染症が緑膿菌やアカントアメーバによる感染です。正しい使用法を守り、清潔な操作を行うことが求められます。

4. 円錐角膜などの角膜変性疾患、強度の乱視には適用できない

角膜の疾患や乱視が強いと、角膜の形にオルソ-Kレンズがうまく適合できません。適応検査でそれらが発覚した際には、オルソケラトロジーを用いることが出来ません。

5. 強度の近視には向いていません

オルソケラトロジーは軽度~中等度の近視に向いているとされています。-6.0Dを超える強度近視の場合は効果もそれなりにしか出ません。それでも近視進行抑制を目的として、裸眼視力が0.5程度でも構わない、などの強い希望があれば、個別に対応させて頂いております。

6. 短時間睡眠では効果が出ない

望むと望まざるとに関わらず、日々の睡眠を短時間で済まされている方もいらっしゃる事と思います。その場合、残念ですがオルソケラトロジーの効果は十分に発揮できません。

治療プログラムの内容

オルソケラトロジーによる近視矯正の治療プログラムは以下の通りです。

【初回】 2時間~2時間半程度かかります。

  • 問診
  • 他覚的・自覚的屈折検査
  • 視力検査
  • 角膜曲率半径測定
  • 角膜形状解析(オルソ-Kレンズ装用前・後)
  • 眼圧検査
  • 角膜内皮検査
  • 前眼部検査
  • 眼底検査
  • オルソ-Kレンズを装用して1時間、リカバリールームで目を閉じたままにします
  • オルソ-Kレンズのフィッティング検査
  • オルソ-Kレンズの発注(お急ぎの方は適宜ご相談ください)

【2回目】 1週間後

  • オルソ-Kレンズお渡し
  • レンズ取り扱い方法ご説明

【3回目以降】1週間検診、1か月検診、3か月検診、6か月検診

  • 問診
  • 他覚的・自覚的屈折検査
  • 視力検査
  • 角膜曲率半径測定
  • 角膜形状解析
  • 眼圧検査
  • 前眼部検査

※オルソケラトロジーによる治療プログラムは自費診療で行います(医療費控除の対応になります)。

料金について

治療プログラム費用

適応検査   5000円(税別)
両眼         15万円(税別)
片眼         7万5千円(税別)
※治療プログラム費用には以下の物が含まれます。
・ 初回レンズ代金
・ 適正検査料
・ 定期検査料(12か月)
  12か月検診以降、検診1回3,000円
  レンズ破損・紛失時、1枚25,000円
  (新規レンズには1年間の保証がついています。紛失を除き、破損や変形の場合1度、交換することが出来ます)
・ ケア用品/スターターキット
・ ディスポレンズ(視力が安定するまでの使い捨てレンズ)
注)オルソ-Kレンズは近視の治療プログラムに含まれる医療機器です。そのため、レンズ単体での販売は行っておりません。治療を中止される場合はレンズを回収致します。また、1年以上検診に来られない方は、レンズを返却いただく場合がございます。