よくあるご質問(Q&A)
- Q明るい光を見たあとに、目に残像が残るのはなぜ?
- A
強い光を見た後に視界に残る影や色のようなものは、「後像」と呼ばれる正常な視覚現象です。網膜の視細胞が一時的に飽和し、反応が鈍ることで起こります。
- Q残像は誰にでも起きるものですか?
- A
はい。明るいもの(太陽、スマートフォンのライト、フラッシュなど)を直視した後は、ほとんどの人に一時的な残像が生じます。生理的現象ですが、長く続く場合は眼科的・神経的異常の可能性もあります。
- Q暗い部屋で光を見ると強く残像が出るのですが?
- A
暗所では瞳孔が開いているため光刺激が網膜に強く届きます。暗順応状態で強い光を見ると、より強く・長く残像が残ることがあります。
はじめに
強い光を見たあと、まぶたを閉じても色や影が残って見えることはありませんか?
こうした現象は「残像」または「後像(afterimage)」と呼ばれ、誰にでも起こるごく自然な反応です。
ただし、残像が長時間続く、繰り返し出る、片目だけに出るなどの場合は、病的な原因が隠れている可能性もあるため注意が必要です。
本稿では、検索キーワード「目 残像」「光 見たあと」に対応する形で、生理的な後像現象のメカニズムと、注意すべき病的なケースについて解説します。
1. 後像とは何か?―目が「焼き付く」ような感覚
後像(afterimage)とは、強い光刺激を受けた直後に、その対象の輪郭や色がしばらく視界に残る現象です[1]。
特に白い背景に黒い図形をしばらく見つめたあと、視線を外すと“逆の色”が残るような感覚は、「負の後像(negative afterimage)」と呼ばれます。 これは、網膜の光受容体(錐体・桿体細胞)が一定の光刺激を受け続けることで一時的に反応性が低下し、視神経信号のバランスが崩れることが原因です[2]。
2. 網膜の「飽和」とは?
網膜にある光受容体は、常に一定の光を受けていると感度が下がる性質があります。これを「光刺激の飽和」といいます。
特に強い白色光や青白いLED光などを直視した場合、錐体細胞の一部が一時的に過剰刺激を受け、応答できなくなるため、反対色が強調された後像が現れます[3]。
この状態は通常、数秒〜数十秒で回復します。まばたきや視線の移動により網膜の他の部位が刺激を受けることで、後像は自然と消失します。
3. 正常な後像と異常な残像の違い
■ 正常な後像の特徴
- ・明るい光を見た後に一時的に出現
- ・両眼に共通して現れる
- ・数十秒以内に自然消失
- ・反対色で現れることが多い(例:赤→緑)
■ 異常な残像の特徴
- ・長時間持続(数分〜数時間)
- ・頻繁に出現・再発する
- ・片眼性、または視野の一部に限定される
- ・色の変化だけでなく“にじみ”や“ゆがみ”が伴うことがある
このような場合は、網膜疾患・視神経疾患・脳の視覚野の異常などが関与していることもあるため、眼科受診が推奨されます[4]。
4. 代表的な病的原因とその例
- ・片眼性の残像 → 網膜中心性漿液性脈絡網膜症、視神経炎
- ・一過性の残像+片頭痛 → 閃輝暗点(片頭痛オーラ)
- ・光に過敏+残像 → ドライアイ、角膜上皮障害
- ・視覚野の異常 → 後頭葉の虚血やてんかん性発作
とくに後頭葉の虚血や梗塞では、「同じ形が見え続ける」ような残像体験が報告されており、脳神経内科領域の評価が必要になることもあります[5]。
おわりに
強い光を見た後に現れる残像は、誰にでも起こる生理的な視覚現象であり、短時間で消えるものなら心配はいりません。
しかし、視野に異常な像が繰り返し現れる、長く続く、片目だけに出るといった場合は、網膜や神経系の疾患のサインである可能性もあります。
「光を見たあと、なんとなく違和感が残る」
――そんな小さな感覚こそが、体からの重要なサインかもしれません。気になることがあれば、早めに眼科専門医の診察を受けましょう。
参考文献
[1] Martínez-Conde S, Macknik SL. Fixational eye movements across vertebrates: comparative dynamics, physiology, and perception. J Vis. 2008;8(14):28.
[2] Peli E, Arend LE. The effect of large surround fields on the color appearance of test stimuli. J Opt Soc Am A. 1990;7(1):203-210.
[3] Gouras P. Retinal Photoreceptors and Color Vision. Science. 1974;183(4123):1104-1110.
[4] Plant GT. Transient visual loss and visual disturbances. Curr Opin Neurol. 2015;28(1):1-6.
[5] ffytche DH, Howard RJ, Brammer MJ, et al. The anatomy of conscious vision: an fMRI study of visual hallucinations. Nat Neurosci. 1998;1(8):738-742.