よくあるご質問(Q&A)
- Q軽い刺激でも痛むのは異常?
- A
角膜上皮(目の表面の薄い層)が傷ついていると、風・光・乾燥など軽い刺激でも痛みを感じやすくなります。傷が小さくても角膜は非常に敏感です。
- Q一度治ったはずなのに痛みが戻るのはなぜ?
- A
上皮の接着が弱く、同じ場所が再び剥がれることがあります。これが“再発性角膜上皮びらん”です。
- Q朝だけ痛いのはどうして?
- A
軽症なら経過観察や生活習慣の改善が可能ですが、多くの場合は手術が有効です。近年は腫れが少ない低侵襲法も導入されています[3]。
1. まず知っておきたい「角膜上皮びらん」
角膜の最表面にある「角膜上皮」は、わずか数十ミクロンの薄い細胞層です。外界からの刺激を防ぎ、涙の保持にも関わる重要なバリアです。しかし、この層は非常に繟細で、乾燥・摩擦・炎症などによって容易に傷つきます。
角膜上皮びらんが起きると、
- ・まばたきで鋭い痛み
- ・しみる
- ・涙が止まらない
- ・砂が入ったような違和感
- ・光がまぶしい
といった症状が出やすくなります。
角膜は体のどの部位よりも密な痛覚神経に覆われているため、傷が小さくても痛みが強く感じられます。「異物がある」と本人が強く訴えるのに、実際には砂もごみもない、というのはよくある状況です。
さらに、上皮が不安定だと、ちょっとした乾燥や風でも刺激となり、痛みが反応しやすい“敏感な状態”になります。アレルギー性結膜炎の炎症性サイトカインによって、角膜上皮のバリア機能が低下し、傷つきやすくなることも報告されています。
2. 角膜上皮びらんの背景にある多様な原因
角膜上皮びらんはひとつの原因で起こることは少なく、日常生活の複数の要因が重なることで生じます。以下のポイントがよく関わります。
乾燥環境
エアコン・暖房・風の通る場所などで涙が蒸発しやすくなり、上皮が露出しやすくなります。涙膜の乱れは痛みの誘因となります。
コンタクトレンズ
長時間の装用、乾燥時の使用、汚れ、フィット不良などが角膜上皮を直接刺激します。乾燥しやすい人ほどトラブルを繰り返します。
アレルギー性炎症
痒みで目をこする
→ 上皮が繰り返し傷つく
→ サイトカインによる炎症で上皮がさらに弱る
という負のスパイラルが起こり得ます。
メカニカル刺激
逆さまつげ、ドライアイ、瞬き不足など、軽微な摩擦でも上皮が傷つくことがあります。
睡眠中の乾燥
朝に症状が出る理由の一つ。就寝時の乾燥や、まぶたとの微妙な癒着が上皮剥離を起こします。
このように、角膜上皮びらんは“複合的な生活背景”を持つことが多く、症状が一時的に軽くなっても、状況が揃うと再発しやすいのが特徴です。
3. 角膜上皮びらんの中でも“再発性”となるケース
角膜上皮びらんの患者全員が再発するわけではありません。
しかし、いったん上皮が剥がれると、基底膜との接着が十分に回復しない場合があり、その部分が“弱点”となります。
その弱点部分は
- ・乾燥
- ・瞬き
- ・風
- ・コンタクトレンズ
といったごく軽い刺激で再び剥がれ、痛みを発生させます。
再発性角膜上皮びらんの典型的な症状は以下の通りです。
- ・朝だけ強烈な痛み
- ・毎回同じ状況で再発
- ・瞬きで鋭い痛み
- ・涙が急に溢れる
- ・コンタクトが装用できない日がある
症状を“その場しのぎ”で治しても、環境が整わない限り、同じ部位で繰り返すことがあります。
一方で、適切な治療と環境調整を行うと再発を防げるケースも多く、正しいアプローチが重要です。
4. 自分でできるケアと生活環境の整え方
角膜上皮の安定には、日常生活の小さな工夫が意外と大きく影響します。
乾燥対策
室内の加湿
エアコンの風向きを調整
就寝時の加湿器
外出時は風の強い場所を避ける
瞬きの質と量
スマホ・PCでは瞬きが1/3以下に減ることがあります。意識して瞬きを深めるだけでも涙膜が整い上皮が保護されます。
コンタクトレンズ習慣の改善
長時間装用を避ける
乾燥する日はメガネ併用
レンズの状態と清潔を保つ
適切な度数とフィットの確認
アレルギー対策
アレルギーがある人は炎症が長引くことで上皮が弱りやすいので、抗アレルギー点眼、目をこすらない、花粉時期は防護などの基本が重要。 目を休める習慣
眼精疲労があると瞬きを忘れがちになります。作業の切り替え、定期的な休息、照明やモニターの調整も効果的です。険診療で行われますが、美容目的で挙上幅を大きくする場合や細かいデザイン調整を希望する場合は自費診療となることもあります。
5. いつ受診すべきか
以下に当てはまる場合は、早めの眼科受診を推奨します。
強い痛みが続く
涙が止まらない
異物感が改善しない
症状が繰り返す
朝だけ強烈に痛む
視界がぼやける
診察ではスリットランプで角膜上皮の状態を直接観察し、染色検査で傷の位置や範囲、涙膜の安定性を評価します。治療は点眼薬中心ですが、再発性の場合は保護用コンタクトレンズや、一時的に治療期間を延ばすこともあります。
6. まとめ
角膜上皮びらんは、乾燥や刺激など日常の中で起こりやすい問題です。
一度でも上皮が傷つくと敏感な状態になり、環境が変わらなければ再発しやすくなります。
再発性角膜上皮びらんは、角膜上皮が弱った状態の“繰り返しのサイン”であり、早めの対策が改善の近道です。
生活の工夫と適切な治療を組み合わせることで、症状を安定させることは十分可能です。
繰り返す痛みがある場合は、自己判断で放置せず、早めの眼科受診をおすすめします。
参考文献
[1]大鹿哲郎『眼科学 第4版』文光堂, 2022
[2]日本眼科学会「眼瞼下垂の原因と分類」2021
[3]日本眼科医会「眼瞼下垂と日常生活への影響」2020
[4]清水弘一「眼瞼下垂手術の新しい選択肢:ミュラー筋短縮術の有用性」臨床眼科, 2021

