よくあるご質問(Q&A)

Q
夜間の光がにじむのは白内障ですか?
A

白内障の初期症状としてよくみられますが、決してそれだけが原因ではありません。涙の乱れ、角膜の形のゆがみ、乱視など複数の要因があります[1]。

Q
夜だけ見えにくいのはなぜ?
A

暗い場所では瞳孔が大きく開き、光がたくさん入り、わずかな濁りや乱れが強調されます。昼には気にならない問題が夜だけ表面化します[2]。

Q
いつ受診すべき?
A

「眩しくて運転が怖い」「光が放射状に広がる」「片目が急に悪化した」場合は、早めに眼科受診をおすすめします[3]。

1. 夜間運転で“光がにじむ”のはどんな仕組み?

夜間の運転は、視覚にとって特殊で負荷の高い状況です。
暗い環境では瞳孔が広がり、多くの光が眼内に入ります。そのため、角膜や水晶体、涙膜のわずかな不整でも乱れが増幅され、「にじむ」「まぶしい」「ぼやける」といった症状につながります。

また、夜は人工光源が強く、ヘッドライト・街灯・信号など光の強弱差が大きいため、昼間よりも“光が刺さる感じ”が強くなります。
加齢によって暗所順応(目が暗さに慣れる時間)が遅くなることも、見えにくさに拍車をかけます。


2. 白内障による“散乱光”と初期症状

白内障は「水晶体が濁る」病気ですが、初期は全体が濁るのではなく部分的・点状の濁りから始まります。
この小さな濁りが光を乱反射し、視力が出ていても「にじむ」「まぶしい」が先に現れます。

初期白内障の特徴

  • ・光が放射状に広がる(スターグレア)
  • ・LEDライトが強烈にまぶしい
  • ・夜間だけ不思議なほど見えにくい
  • ・信号や標識が白く飛んで見える
  • ・雨で路面反射が増えると特に辛い

白内障の種類によって症状の出方は異なります。
皮質白内障では散乱光が強く、核白内障では色味が黄ばむ、後嚢下白内障では中心部の濁りで急にまぶしさが増すなど、見え方に特徴があります。
夜間運転でのまぶしさ・にじみは、白内障初期ほど顕著になりやすいため、早期でも放置しないことが重要です[2]。


3. 白内障以外でも“光がにじむ”原因は多い

夜間のにじみは「白内障=正解」とは限りません。実際、眼科ではさまざまな原因が確認されます。

涙の乱れ(ドライアイ)
涙は目の表面を滑らかに保つ“第1のレンズ”です。
乾燥や瞬き不足で涙膜が乱れると、光が均一に届かず散乱し、にじみやぼやけが生じます。
夜間の乾燥した車内では特に悪化しやすい症状です。

角膜表面のゆがみ(不正乱視・円錐角膜)
角膜がきれいな球面でない場合、光がねじれて広がり、光源の周りに輪がついたり、形が伸びたりして見えます。
軽度でも夜間環境では目立ちやすくなります。

屈折誤差の残り(近視・乱視・遠視)
度数が合っていないメガネ・コンタクトの使用は夜間視を大きく悪化させます。
特に乱視は光の伸びやスターグレアの原因になります。

コンタクトレンズの状態
乾燥したレンズ、汚れ、フィットの不良は光の乱れを増やし、「夜だけ見えにくい」という訴えにつながります。

白内障手術後のにじみ
人工レンズ(IOL)は光学的に非常にクリアですが、次のような理由で術後に一時的なにじみが出ることがあります。

  • ・多焦点IOL特有の光学特性
  • ・乱視矯正のずれ
  • ・後発白内障による微細な濁り
  • ・瞳孔とレンズの位置関係による光の散乱

多焦点IOLでは特に夜間のハロ・グレアが一時的に強めに出ることがあります。

LASIK / PRK など屈折矯正手術後
手術後しばらくは角膜が安定せず、夜間に光がにじみやすい時期があります。
瞳孔が大きい人では周辺部の光学特性が影響し、特に強く感じやすくなります。

ICL(眼内コンタクトレンズ)術後
ICLではレンズエッジの反射や位置の微調整の影響で、夜間のにじみを感じる場合があります。ほとんどは経過とともに軽減しますが、術後の一定期間は注意が必要です。

4. 夜間視力低下が生活へ与える影響

夜間運転の不安は単なる「見えづらい」不快感ではなく、安全性に直結します。

  • ・対向車のライトで視界が奪われる
  • ・標識・歩行者・自転車の発見が遅れる
  • ・雨天時は反射光が増えてさらに視界が曇る
  • ・疲労時は暗所順応がさらに遅くなる

仕事や生活のリズムによっては運転が避けられない人も多く、夜間視力の低下は活動範囲の縮小や心理的負担にもつながります。
「慣れれば大丈夫」と思って放置するより、早めに原因を特定することが安全につながります。


5. 受診の目安と眼科での評価

以下のような場合は受診が推奨されます。

  • ・夜だけ急に見えにくくなった
  • ・光が放射状に広がる
  • ・雨の日の運転がつらい
  • ・術後の見え方が安定しない
  • ・片目だけ症状が強い

眼科では、視力検査だけでなく

  • ・角膜形状解析
  • ・涙液の安定性
  • ・水晶体・人工レンズの状態
  • ・瞳孔径
  • ・コントラスト感度

    などを総合的に評価し、原因を特定します。

6. 受診の目安

原因に応じて対処方法は異なります。

白内障
進行度に応じ、生活指導から手術まで。手術後はまぶしさが改善する例が多いです。

ドライアイ
点眼、加湿、環境調整、瞬きを増やす工夫などで改善します。

乱視・屈折誤差
適切な度数の眼鏡・コンタクトレンズで改善可能です。

術後のにじみ
時間の経過とともに改善する例が多く、経過観察が重要です。

日常での工夫

  • ・フロントガラスの清掃
  • ・目の休息
  • ・適度な休憩
  • ・雨天時は速度を控えめに
     夜間運転は環境要因が重なるため、小さな習慣でも改善効果があります。

7. まとめ

夜間運転での「光がにじむ」「まぶしい」は、白内障をはじめ、涙膜、角膜、屈折誤差、術後の光学特性など、多様な原因で生じます。
夜間は眼の光学系の乱れが強調されるため、日中の視力だけでは判断できません。
安全性に直結するため、原因を正確に把握し、適切な対処を行うことが大切です。


参考文献

[1]大鹿哲郎『眼科学 第4版』文光堂, 2022
[2]日本眼科学会「白内障と散乱光」2021
[3]厚生労働省「高齢者の運転と視機能」2020