よくあるご質問(Q&A)
- Q視力が悪いと運転できない?
- A
眼鏡やコンタクトで視力が矯正できる場合、両眼で0.7以上あれば運転免許の取得・更新は可能です。
- Q片目だけ見えない場合は?
- A
もう片方の視力が0.7以上で、視野に大きな欠損がなければ免許を取得できますが、安全面での注意は必要です。
- Q色覚異常でも運転できる?
- A
日本では制限されていません。信号の配置・形状で判断する力が大切になります。
1. 視力は「社会とつながる力」
視力は、単なる“見える/見えない”の問題ではありません。それは「人の命を預かる力」であり、公共空間での責任と直結しています。
運転中の一瞬の見落としが、他人の人生を変えてしまうこともあります。だからこそ、日本では道路交通法により明確な視力基準が定められています。
2. 運転免許と視力基準──どこまでOK?
普通自動車免許(第一種)の視力基準は以下の通りです:
- ・両眼で0.7以上
または - ・片眼が0.7以上・他眼が0.3以上
矯正(眼鏡・コンタクト)を含めてこの基準を満たせば、運転は可能です。
中型・大型・第二種免許では、両眼で0.8以上、片眼それぞれ0.5以上、加えて「深視力テスト(奥行き認識)」に合格することが求められます[1]。
3. 「片目だけ見えない」場合の現実
たとえば、右目に失明があり、左目の視力が1.0であれば運転可能です。ただし、深視力(距離感)や周辺視野に制限がある場合、事故リスクが高まることも報告されています。
実際、片目視のドライバーは、右左折時に自転車や歩行者の発見が遅れる傾向にあるとの研究もあります[2]。
4. 色覚異常と信号の見分け方
日本では色覚検査が免許基準から除外されており、**赤緑色覚異常(P型、D型)**の方でも免許取得が可能です。
信号の位置や形状、明るさの差で識別することで、多くの方が問題なく運転を続けています。
ただし、海外では色覚で制限がある国もあるため、国際免許の取得を考える際は要注意です[3]。
5. 高齢者の視力と免許更新
75歳以上になると、免許更新時に認知機能検査・高齢者講習が必須になります。視力検査も含まれており、白内障・加齢黄斑変性・緑内障などによる視機能低下が発見されることも少なくありません。
加齢に伴い「周辺視野の狭窄」「まぶしさへの過敏」「暗所での視力低下」などが進行すると、事故のリスクは確実に増加します[4]。
6. 「少し見えにくい」は重大な兆候かも
実際に事故を起こした高齢ドライバーの中には、「自分はまだ見えている」「今まで大丈夫だった」と語る方もいます。
しかし、視力は少しずつ低下するため自覚しにくいという特徴があります。特に夜間の運転や信号の確認、歩行者の認識力は大きく落ちている可能性があるのです。
だからこそ、「最近見えにくい」「視野が欠ける」「夕方になると見づらい」といった些細な違和感でも、眼科受診をおすすめします。
7. 視力は“見える”ためだけの能力ではない
運転とは、スピードの中で「情報を瞬時に見て・判断し・行動する」ことの連続です。
視力とは、身体の能力であると同時に“社会を安全に生きるための責任”でもあります。
見えづらさを感じたとき、まずはご自身の安全、そして周囲の安全のために、眼科での精密検査を受けてみませんか?
参考文献
[1]道路交通法施行規則 第23条
[2]Wood JM, et al. Driving performance of monocular drivers: a comparative study. Arch Ophthalmol. 2009;127(6):745–750.
[3]Birch J. Worldwide prevalence of red–green color deficiency. J Opt Soc Am A. 2012;29(3):313–320.
[4]Owsley C, et al. Vision impairment and driving. Surv Ophthalmol. 1999;43(6):535–550.