よくあるご質問(Q&A)
- Q片目だけかすむのは、よくあることですか?
- A
一時的な疲れ目やドライアイでも起こることはありますが、「片目だけ」という点は重要なサインです。眼球や視神経、脳など、片側に限局した異常が関与していることが多く、自己判断での放置は危険です。
- Qどのような病気の可能性がありますか?
- A
網膜中心静脈閉塞症、加齢黄斑変性、視神経炎、白内障のほか、一時的な血流障害(網膜虚血)や片頭痛性視覚障害も原因になり得ます。いずれも早期の評価が重要です。
- Qしばらく様子を見てもよいですか?
- A
数分以内に完全に回復する場合は急を要さないこともありますが、「数時間〜数日続く」「繰り返す」「視野が欠けている」「ゆがむ」といった症状を伴う場合は、眼科での早期診察をお勧めします。
はじめに
「右目だけがかすむ」「左目がなんとなく見えづらい」――そんな片側だけの視覚異常、見過ごしていませんか?
両目で起こる不調とは異なり、片目だけに現れる視力のかすみは、明確な病的サインであることが多いのが特徴です。
本稿では、検索キーワード「片目 かすむ」で流入する読者を想定し、片側性の視覚異常に潜む代表的な疾患と、放置のリスク、早期受診の重要性について解説します。
1. 片目だけかすむときに疑うべき病気
● 網膜中心静脈閉塞症(CRVO)
網膜の血液の出口が詰まり、視力低下やかすみが突然起こる疾患。高血圧や糖尿病を有する中高年に多く、治療が遅れると視力が戻らないこともあります[1]。
● 加齢黄斑変性(AMD)
片目だけ中央がかすんで見えたり、ものがゆがんで見えることがあります。加齢により黄斑部が障害され、視力の中心が損なわれます[2]。
● 視神経炎
急に片目の視力が低下し、色が薄く見える・目を動かすと痛いなどの症状を伴うことがあります。若年層でも起こり、神経疾患の一症状として現れることもあります[3]。
● 白内障(左右差のある進行)
白内障は通常両目に起こりますが、進行の速度に差があると「片目だけかすむ」と自覚することがあります。高齢者では特に頻度が高いです。
● ドライアイ・眼精疲労
比較的軽微な原因として、涙液の蒸発や疲労によって一時的に片目だけ見えにくく感じることがあります。ただし慢性化・悪化する場合は精査が必要です。
2. 一過性の血流障害や片頭痛でも起こる?
● 一過性黒内障(Amaurosis fugax)
網膜に血液を送る動脈が一時的に詰まり、数分〜数十分だけ片目がかすんだり、真っ暗になるような症状が現れます。
この現象は、脳梗塞の前兆であることもあるため、特に動脈硬化や頸動脈狭窄のある方では、早急な脳神経評価が必要です[4]。
● 片頭痛オーラ(閃輝暗点)
片頭痛の発作の前に、ギザギザした光や視野の一部のかすみ・チカチカなどが出現することがあります。多くは両眼性ですが、自覚として片目だけに起きているように感じることもあります[5]。
通常は30分以内に回復しますが、頻発する場合は片頭痛の治療介入が必要です。
3. 受診を要する「危険なかすみ」の見極めポイント
受診を要する「危険なかすみ」の見極めポイント
- ・急に視力が落ちた
- ・視野の一部が見えない(中心や周辺)
- ・光がにじむ・ゆがむ
- ・片目だけ、色や明るさが違って見える
- ・視界の中心がぼやけて読書がしにくい
- ・数日以上改善しないかすみがある
「見えにくいけど、もう片目が見えるから大丈夫」と思っていると、受診が遅れて視力が回復しないケースも少なくありません。
おわりに
片目だけのかすみは、軽視されがちでありながら、放置すべきでない疾患のサインであることが少なくありません。
急激な変化、繰り返す異常、視野の欠損がある場合には、「自然に治るだろう」と自己判断せず、一度眼科での専門的な診察を受けることを強くおすすめします。
見えづらさは、目だけの問題ではなく、全身の健康状態を映す鏡であることもあります。
何かがおかしいと感じたときが、守るべき視力のための第一歩です。
参考文献
[1] Hayreh SS. Retinal vein occlusion. Indian J Ophthalmol. 1994;42(3):109-132.
[2] Lim LS, et al. Age-related macular degeneration. Lancet. 2012;379(9827):1728-1738.
[3] Toosy AT, et al. Optic neuritis. Lancet Neurol. 2014;13(1):83-99.
[4] Biousse V, Trobe JD. Transient monocular visual loss. Am J Ophthalmol. 2005;140(4):717-721.
[5] Charles A. The pathophysiology of migraine: implications for clinical management. Lancet Neurol. 2018;17(2):174-182.